key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

芥川龍之介のこと

河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)

河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)

昨日画像をあげた吉本隆明の本。
漱石は『こころ』、鴎外は『高瀬舟』。では芥川はというと『玄鶴山房』が取り上げられていて、久々に本を引っ張り出してみたのはいいけれど、新潮の旧版だったので、ものすごい活字が小さくて、開いてびっくりした。
文庫の字が大きくなった頃には目がちかちかして「見にくいなぁ」と思っていたんだけど、やはりいつのまにか慣れるものなのだよね。
少し前に、坂口安吾の『文学のふるさと』について書き留めておいたんだけど、その『文学のふるさと』の中にも芥川のエピソードが出てくる。芥川がある小説家の来訪を受けて、見せられた小説の内容がどうにも陰惨である*1のに対し「こんなことがいったいあるのか」と訊き返したら「それはおれの話だが」と言われて何も返せなかったという。その経験のせいか、芥川の後期の作品は雰囲気が変わったと言う話だったんだけど、確かに芥川の初期の作品、王朝ものとかのあたりは「よくできたお話感」が何となく感じられて、いまいち「いろいろ読んでみよう」という気になれなかったことを思い出した。上手い書き手で、題材の処理もスマート、きっちりと短い文章でまとめる辺り、流石とは思うわけなんだけれど。
吉本隆明の本でも「後期の芥川は変わった」と同じように言われているので、そこを読みながら『文学のふるさと』のことを思い出しました。
にしても、芥川に自分の間引き体験小説を見せた作家って誰だったのだろうか。

*1:生活苦から生まれた赤ん坊を殺してしまう話