key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

『文学のふるさと』

今日、坂口安吾の『文学のふるさと』という文章を読みました。大変興味深い文章でした。
この文章で言われているところの「モラル」というのは、言い換えると、「救い」「オチ」的なものじゃないかと。かわいそうな女の子が森でオオカミに食べられました、というペローの童話には、実はきちんと教訓がついているので、「モラル」=「道徳、教訓」とは簡単には結びつけられない。ここで「アモラル」と言われているのは、悲惨な事件が悲惨なまま終わることを指しているように思われる。
多くの人は、かわいそうな登場人物が最後には救われることを願っているし、幸せな物語が続くことを願っている。それは現実が、必ずしもそうではないことを暗に知っていて、なおかつそのことにはフタをしておきたいと言うことなのではないか。襲われた傷は容易には消えず、死者は蘇らない。ただ、それを本の中にそのまま写し取られても、それこそどうしようもない。世の中にはどうしようもないことがあることをみんな何となく知っているんだけど、心のどこかで「救いがあって欲しい」「どうにかなって欲しい」と感じている。そういう心情が、物語を作らせるのかと思った。