武藤くんは料理が好きで、自分一人分を忠実に作り、誰もいないのにきちんと「いただきます」と言って食べ始める。
以前同じ職場にいた少し年下の女の子が「料理は達成感があるし、作っているときには他のことを忘れて没頭できるので、いいですね」という話をしていたのだけど、武藤くんもそんな感じかな、と思った。
料理をしているときには、料理のことだけを考える。次に入れる材料やスパイスのこと、材料の出来具合、味。武藤くんは料理をしながら、その日子供たちから騙されて味わった嫌な思いを消してしまおうとしているのかも知れない。
もうDVDは返却してしまったのだけど、武藤くんはなにか特別なことがあったときに、日サロに行っているようだった。特別嫌な思いをした日。特別いいことがあった日。
日サロで蛍光管のドームに入りながら、武藤くんは一人で何を考えていたんだろう。家に帰る前にワンクッション、静かに思考する時間、落ち着く時間を日サロで持っていたようにも思えた。家に帰っても誰もいないのに。でもまっすぐ家には帰りたくない時、日サロに行く。小西真奈美がドラッグストアをぶらぶらしてパチる代わりに、彼は日サロに行く。二人は似ているところがあるけど、小西真奈美は嬉しいことがあったときに行くところがない。そこが違うところかも。
それにしてもなんで日サロ?←やはりこれか。
じりじり灼かれていると頭がぼーっとしてくるからか。汗をかいてすっきりということか。私は日サロには行ったこと無いので、わからないですけど。
映画の最初の方で武藤くんは陣内さんから「お前、また黒くなってない?」とからかわれる。その場では「冬だから、スキー?」と言われてもにょもにょする武藤くんだが、「日サロに行ってる」なんて口が裂けても言えないし、それ以上突っ込まれたくもないということではあるな。