key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

セイレーン(断片)

「そのうち歌でも歌い出すんじゃないか」
 あるとき秀英と会って、永夏の話題になった時、太善は冗談のつもりでそう言った。研究生時代から永夏とつきあいのある秀英は、永夏と太善の関係についても、永夏から無理矢理知らされていたらしい。
「先生、永夏の歌聞いたことあります?」
 太善は首をかしげた。鼻歌ぐらいなら歌っていたかもしれないが、あまり記憶にない。
「ものすごい破壊力ありますよ」
 秀英は嫌な思い出でもあるようで、口を曲げていた。
「永夏が事務所の人と初めて顔合わせしたとき、僕たまたま一緒にいたんですけど、永夏はそのとき、「僕は音痴だし、ダンスも楽器も演技も出来ないですけど」って言ったんです。事務所の人は冗談だと思ったらしくて笑ってましたけど、……本当ですからね」
 秀英の深刻な口調に、太善はつい秀英を見返した。
「永夏が歌ったり踊ったりしなきゃならなくなるようなら、止められるのは先生だけだと思いますから」
 太善はどうしようもなく顔を引きつらせて笑い返した。

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アンソロ原稿脱稿記念 使いたかったけど使わなかった部分をここに貼り付けます。

最近つくづく思うのですが、私は美形が残念な感じなのが好きなんだな。
とくに自分の顔を見すぎて飽きているようなのが大好き。