「読み始めた」と書いたばかりだった照柿(下) (講談社文庫)を勢いに任せて読了してしまう。
合田シリーズであり、葡萄のように黒い、底知れぬ穴のような目をした女にとりつかれたように入れ込んでしまう合田雄一郎の話であることに間違いはないんだが、どうしてもメインは野田達夫のように思われる。クライマックスの達夫が哀れである。
単行本には記載があるという「達夫、好きや――」という合田の台詞*1と、賭博の際に秦野耕三と合田の間で交わされた台詞*2が整理されてしまっているのがちょっと残念かな。
気になることが数点。
- 何かにとりつかれたようになる、激しい衝動について
- 精神的な疾患を持つ登場人物と、彼らの犯罪について。
- 工場で機械系製造業に従事する(いわゆるブルーカラーの)男と、教員・信用金庫職員など、堅実なイメージのある職種の(しかし肉感的で、淫蕩な面を持つ)女の組み合わせについて
- 殺人の動機などについての作者の考え方。おおよそ計画的なものではなく、突然啓示が降りるようになって、衝動的に行われることが多いものだ、と、考えているのかも知れない。自分でも制御しかねるような、得体の知れない情動に突き動かされて行ってしまうもの、というか。
で、次は速やかに↓に向かうが、これももしかすると文庫化に向けて現在鋭意改稿中なのだろうか。
- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 1997/12/01
- メディア: 単行本
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『照柿』もかなりの改稿がされたようだけど*3、さっき読んでいて
人称間違いを発見してしまった*4。こういう見落としって、あるんだなぁ。