key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

『門』昨日読了

門 (集英社文庫)

門 (集英社文庫)

出だしの感じがかったるいというか、微妙に雰囲気が暗くて、読んだりやめたり読んだりやめたり本も買い直したりを繰り返していたけど、ようやく最後までたどり着いた。
主人公が困難から逃げているうちに勝手に回避されてしまうので、いつまでも問題は片付かないままで話が終わる。
裕福な家の青年が、女のことが原因で後ろ盾をなくして地味にひっそり崖下の借家で女と暮らしてる、と言う話で、直接的に『それから』から続いている感ありありなんだが、「財産管理を任せていた親類に金を使い込みされる。そしてその金はものすごい目減りしている」とか、「不義を経て結婚した男女には子供が生まれない」とか、この後の『こころ』にも通じるところが見受けられる。また、後者の「子供が生まれない」の、とことん生まれないあたり、実際ものすごいかわいそうなくらい。「生まれたけど生きてない」とかさ……。そこまで徹底するか、という*1
『こころ』の先生とか、不能者なんじゃと思われる時があるんだけど、『門』の夫婦って、結構なかよしなんだよね。奥さんが具合悪いと真剣にはらはらしたり、旦那が鎌倉で参禅している時に、たかだか十日くらいなのに、奥さん二回も長い手紙書いてよこすし。もう、絶対子供は作らせない、という執念みたいなものを感じる。
あと、昔の話なので、言葉遣いが時々びっくりする。「脳が悪いから仕事しばらく休む」とかさ……。

漱石って、いま実際どのくらい読まれているのかわかんないけど。
たぶんそんなに読まれていないんじゃないかと思うけど。
もし、現代に現役で活躍している作家だったら「またこれか」と言われそうなくらいには、同じようなこと繰り返して書いてるよね。

*1:直前まで生きていたけど、出てくる時に臍帯が首に巻き付いて窒息とか。