key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

死ぬ前に食べたいものとか。

 14日からお盆の帰省をしていました。まあ、一泊しかしなかったんですが。
 で、高速下りたら丁度お昼頃になっていたのですけど、旦那が以前私の亡父に連れて行ってもらった店の天丼が食べたいといいだしたので、実家に寄る前にお寺まわりを済ませてしまおうということになりました。店と寺はおおよそ同じ地区にあるので。
 それでもう20分くらい走っていったわけです。ついてみると、どうやら地元の大きな神社でお祭りをやっていたようなのですが、昔の賑わいがもう幻のような町の寂れようで、昔アーケードだったところは屋根が外され、車で通行できるようになってました。そんなふうに町全体がもう大変な寂れようであるにもかかわらず、目当ての店は(お昼ご飯の時間帯を少々はずれていたにもかかわらず)大変な混雑で、結局30分ぐらい待たされるはめになってしまいました。他にはほとんど人通りもないし、周囲の店も閉まっているところが圧倒的に多い中、その店だけ、もの凄く混んでいるというのは、奇妙な感じもしました。ちなみに一本上の通りにはその店の兄弟店があるのですが、駐車場のない、テーブル3〜5卓くらいのこじんまりとした店構えにもかかわらず、そちらも大変な混みようでした(外から見ただけですけど)。いずれの店も老舗なのですが、市内でもかなり古くに拓けた地区なので、こういう店が他にもいくつかあり、そういう老舗店の周りだけ奇妙に賑わっているわけです。
 話がそれましたが、出てきた天丼は子どもの頃に食べたのと同じような味がして、懐かしかったし、美味しかったんですけど、食べながらふと「死ぬ前にこれ食べたら幸せかもなぁ」と思ってしまいました。
 「死ぬ前に何を食べたい?」というのは、わりにありふれた質問だと思うのですが、最近食事にあまり関心を持てない私は、具体的な何かをこれまであまり思いつけずにいたんですけど、今回初めてそういうのにかちっとはまるものが見つかったような気がしました。でも嬉しいというよりは、幼い頃からほとんど外で食事をすることがなく、盆暮れぐらいのペースでつれてってもらうのがその店、という自分の貧しい経験とか、貧しい過去にがっかりもしました。今に比べると、本当にいろいろなものが無くて、貧しかったと思う。そういう自分の貧しさがちょっと恥ずかしくなった。
 亡父はその店から車で十分くらいのところにある病院にずっと入院していたのですが、時々母に頼んで、その店の天丼を買ってきて貰っていたという話を、以前聞いていたのですが、在職中は接待(する方)も多く、退職後には「刺身や天ぷらなどはもういらない」といっていた父にとっても、もしかしてこれが御馳走だったのかと思うと、なんだかちょっと泣けてくる気がします。