key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

『嵐のあと』

嵐のあと (花音コミックス)

嵐のあと (花音コミックス)

日高ショーコさんは個人的に信頼できるあたりから「いい」という話があったので、以前から読んでみたかったんです。
熱帯密林商店などのレビューを見ていると、「榊は受けだと思った」「受けの方がいい」などと、わりに余計なお世話的なコメントも多いようなんですが、実は私も読みながら、榊は受けかと思ってました。まあ、結局違うんですけど。
しかしわりにそんなことはどうでもいいというか。
私が思うに、この話のキモは、榊のセフレの美山くんが最後に「いまの榊さんは全然ダメ」と言うけど、(私、『シグナル』は未読ですが)普段クールな榊が*1、この恋愛においてぐだぐだに崩れてしまうという、その「恋愛時のダメ感」なのではないかと思ったのですが。だから、この話において、「いつもの榊さん」が「いつものように」恋愛をしては、それこそ全く(話として)ダメなわけですよ。だって、嵐に巻き込まれるのは、岡田君だけじゃなくて、榊さんもなんだし。
相手の岡田君もなかなかいい男なんですけど、公私のギャップにはちょっと驚いた。普通に礼儀正しい顔をしているかと思えば、突然私生活でフランクになったりして。そのフランクさがわりに唐突。初対面に近い取引先の相手と初めて飲んで、いくら話が盛り上がって楽しく飲んで自分のところに泊めたからって、あれは砕けすぎではなかろうか。
日高ショーコさん、非常に絵も綺麗で、話もなかなか読み応えがありました。他のも読んでいいかな、とも思った。
しかしこの話について敢えてもう少し言うと、「嵐に巻き込まれた」とネームにある割には、あまり岡田君が翻弄されている感じがしないのね。嵐というよりは、「ちょっと強い風に吹かれた」くらいな感じしか受けられなかった。だから榊さんのせっぱ詰まり感は理解できても、岡田君の気持ちがなかなか伝わってこなかったような気がします。「同性愛者に抵抗がある」というのはわかったし、美山君の言葉にショック受けたのもわかるんだけど、彼の気持ちが大きく動いたという感じが受けられなかったのが残念でした。そういうことで、表現がちょっとソフトなのかも知れないです。
しかし『恋愛時のダメ感』というか『恋愛時のどうしようもなさ』を書きたいのは私も同じなので、個人的にはかなり親和性が高い漫画でした。

あと、榊さんがそこはかとなくオガっぽいので、読みながら笑いそうになりました。ははは。

*1:追記。中間で「普段の榊」に戻るところが入っているのを思い出した。本当は全く戻ったわけじゃないのだけど、事務所の女の子達の目からは「戻った」と見える。