key of life

BL小説を書いたりしている江渡晴美の日記です。

青空文庫のこと

『青空文庫 全』寄贈計画のお知らせ
青空文庫が十周年を記念して、DVDをいろいろな図書館に寄贈するのだそうだ。
青空文庫は私もよく利用している。図書館まで出かけていけないときや、本が見つからない古い作品を読む必要があるときに、webで引っ張ってこられるというのはとても便利だし、ありがたい。また、紙媒体で保存しておく必要があるときには、本のコピーよりもデータの方が便利だったりするので。


今までで、一番驚いた図書館というのは、実は前に住んでいた小さな町の図書室で、古い公民館の三階の古い会議室に本を押し込めただけのところだった。金子さんは本が好きで、公民館で囲碁を習うついでによく図書室に行っていたので、私も彼女を迎えに行った際に、初めてそこに足を踏み入れたんだけど、あまりの状態に茫然となったのを今でも覚えている。
正直「なんだろう。この悲惨な本の扱われ方は」と思った。
小さな部屋にぎっしり本があるのだけど、本棚も机もかなりガタがきているものをそのまま使っている。それだけではなくて、町内の各学校に配送するためのケースが床にぎっしりと並べられていて、床には細い通路が一本出来ているくらいのすき間しかあいてない。部屋が小さいこともあって、所蔵本は部屋からはみ出し、廊下にも並べられていた。
環境的には、学童保育の会場になっているホール(学童の子どもや一般利用者のために図書の貸し出しをしている)の方がいろいろきちんとしている。話をしたところ、司書さん(無資格)はボランティアの方で、代わる代わるやっている様子。本を楽しんでもらおうといろいろ工夫されているのは、わかったのだが、一体どうしてこんなところでと思い、経緯などを聞いてみたこともあった。
話によると町議や役場の方では図書室をなくしてしまいたいと考えていたのだそうだ。だから予算もつけてもらえないし、部屋の整備も出来ないらしい。それでも今いる司書さんが、各学校への図書の貸し出しを初めて、少しでも利用してもらえるようにしているとか。どういう内情があって図書室をなくしてしまおうとしているのかわからないけれど、なんだかとてもがっかりしてしまった。
その図書室について子どもたちに話を聞いてみたこともあるんだけど、みんな利用しないという。何故かというと、「見たい本がない」「居心地が悪い」という。結局悪循環だな、と、思った。
本が充実していない図書館に意味はないと思うのだが、予算がないというのはわかるし、一番最初に予算を削られるのも図書関係だと言うことは知っている。ただそうして図書を取り巻く環境を貧しくしていくと、利用もされなくなっていくのだよな。
都市部の大きな図書館では、青空文庫のDVDなど必要ないところもたくさんあるだろうけれど、地方の小さな町村の図書館や学校の図書館では、DVDの内容にも劣るような蔵書のところもたくさんあるはずなので、そういう場所でこのDVDが有効に活用されればと思う。著作権の切れた、限られた数のものだけれども、出会いの機会は多い方がいいと思うので。